ルターの提案01 時制☆ルター:音楽に喩えると、時制とは「調」のようなもので、「全体の調子がどんなか」を言っているのです。現在時制は「緊張がある、変化に富んだ明るい長調」、過去時制は「安心するが、淡々とした暗い短調」のようなものです。例えば、音楽の「主調→転調→主調」のパタンと似ていて、説明文の基本パタンでは段落ごとに時制を使い分けて「現在時制→過去時制→現在時制」になります。 繰り返しますが、時制とは、文章全体の「調子」。 音楽で喩えるなら「長調」のような明るい説明向きの現在時制と 音楽で喩えるなら「短調」のような単調で落ち着いた物語向きの過去時制の 2つを設定することに意義がある。 「述語動詞の形」(verb forms)と混同してはいけない!(完了時制という用語はナンセンスです) 1) 現在時制 =音楽で喩えるなら「長調」 ・論評する = 緊張 ・話し手と聞き手を想定する。しかも、話し手は聞き手に影響を与えようとする。 ・説明文/対話文:「物事はこうなっている」 ・「現在の事実(習慣)や真理などを、話し手が聞き手に説明する (助動詞willを用いないでも現在進行形で未来の説明が可能) ・【現在形】【現在進行形】【現在完了形】が3本柱 (a)【現在形】「(ふだん)~している」、 (b)【現在進行形】「(その場限りで)~している」「(これから)~するの[です]」 (c)【現在完了形】「(すでに)~している」「(その場で)~ちゃった/こうなっている」 ・【助動詞】は2系列。「聞き手に働きかける場合」と「話し手の判断」で区分すると明快。 2)過去時制 =音楽で喩えるなら「短調」 ・物語る ー 緊張緩和 ・話し手は介入しない。「出来事はひとりでに物語られるかのようである。」 ・英語で:過去形/過去進行形/過去完了形 ・物語文/報告文:「いつ誰がどうした」 ・過去の出来事を時間経過に合わせて物語る ・【過去形】が中心:過去の時点を指す ⇔(【現在完了形】は過去の時点を指さない) ・【助動詞】は「極力使わない」のが基本。 参考: ポール・リクール/久米博 訳『時間と物語II フィクション物語における時間の統合形象化』新曜社(1988) ポール・リクール(Paul Ricœur)が言語学者バンヴェニストEmile BenvenistやヴァインリヒHarald Weinrichらの諸説を取り上げて、時間とテキストの関係を考察した本。 1)物語(réci) ・物語る = 緊張緩和 ・話し手は介入しない。「出来事はひとりでに物語られるかのようである。」 ・単純過去(le passé simple défini)/半過去(l’imparfait)/大過去(le plus-que-parfait) 2)談話(discours) ・論評する = 緊張 ・話し手と聞き手を想定する。しかも、話し手は聞き手に影響を与えようとする。 ・現在(le présent)/未来(le futur)/複合過去(le parfait) |